今回の座学は「るーらるハウス」にそろっておじゃまして、鈴木杉江さんからお話を聞いた。
鈴木さんは愛知県生活改良普及員を長年勤務、農産物の加工・開発、特産品の育成、食文化の発掘と伝承、朝市など農産物をとおしての都市と農村の交流活動など、さまざまな現場での実践にたずさわってこられた方です。
平成12年に「人・食・農・文化」の交流の場として、日進市にるーらるハウス」を開設。「みんなの台所」「ふるさとの家」として、料理教室などさまざまな活動にとりくんでおられます。
■↓るーらるハウスの外観。左側奥が入口。味噌樽を玄関に移設し、シンボルとなっている。左側には畑があり店主の鈴木さんが自ら耕作も。
今回は「米や野菜を選ぶ目」というテーマでお話いただきました。
「食のむこうに農業がある」ということばをはじめ、はっとすることばがいっぱいで、目をひらかせられる指摘の連続に、時間を忘れるほどでした。
次回はぜひこちらで「豆腐づくり」などの料理教室に参加したいという要望が会員から強くだされました。(12月11日に実施予定)
■↓左側の背中を見せている方が講師の鈴木杉江さん。巧みな話に引き込まれる。
■↓部屋の奥は厨房だ。この厨房は天窓がリモート操作で開閉。中では餅つきもできる。
<お聞きした要旨~少し長いですが。>
(1)農業は(今となってみると)「草との戦い」だ。
(2)野菜を「つくること」は「食べること」につながる。
今、水田の40%が余っている。日本人がご飯を食べなくなったからだ。もう1合の半分でも毎食余分に食べてくれれば、水田が余るということはないのだが。
(3)食べるむこうに「農業」がある。
これまで「つくる人」は「つくること」だけを考えてきた。
また「食べる人」は「食べることだけ」を考えてきた。
その結果、今は売れなくなってしまっている。
つくれば、食べて健康になってほしいと思うもの。
今は子どもが柿の皮をむけない。一人になるとハンバーガーやカップラーメンを食べている。
(4)(農業は)作物をつくるだけでない。探せばやることはいっぱいある。
(5)愛知の米
①日進の米は無農薬
日進では田んぼに農薬をまかない。住宅地にありまけないのだ。他の県では減農薬や無農薬を言ってるのだが、日進ではもともととくには言ってないが減農薬なのだ。
②日進の「カントリーエレベータ」の存在
日進のグリーンセンター(農協の直売所)のところにある「カントリーエレベータ」でモミで貯蔵されており、週単位で精米されグリーンセンターで売られている。このグリーンセンターは県下ではじめて日進市にモデルとしてできたものだ。(たいへん鮮度が高く、)米も全量が売れている。
③コシヒカリにこだわる意味はわかっているか
米は同じ品種ばかりだと一度にみんな取れるので、量がありすぎ収穫後の処理に困ってしまう。そこで作付けを変えるわけだ。こちらで言えば、コシヒカリ→ミネアサヒ→祭り晴→あいちのかおり、と順に作付けしていく。収穫の時期がそれぞれ違うのだ。
コシヒカリは一番最初にできる。
コシヒカリはもともと新潟県のような寒い地域のものなので、日進では木曽川の水(愛知用水)を田んぼに流しっぱなしにして(温度を低く保ち)つくる。
そんなふうに(この県の気候に合わない、自然でないやり方で)作っているコシヒカリにこだわるのは一体どんな意味があるのか。
④あいちのかおり
米はその県の風土にあったものを選ぶべきだ。
「あいちのかおり」はばく大な税金を投じてつくられた品種だ。粒は大粒でねばりがあり、安くておいしい。愛知県の農業試験場は全国でトップクラスの研究機関だが、ここが開発した。
ただ、名前がダサイ。他の米のように電通とかの「広告代理店」に頼んで名前をつけたわけでもない。愛知県は米のように、いいものがあっても知られていない、知名度が低いものが多い。
⑤ミネアサヒ
県内の設楽、小原といった山の方では、この品種がうまい。
⑥無洗米について
あれは災害時やキャンプ用に開発されたもの。水洗い不要で余計な水もいらないし、水を汚さないためのもの。一種の加工品。うまいはずがない。
(6)漬物
市場に入る野菜の一番いいものがつけもの(浅漬け)に行く。
しかし今は漬物はほとんど「外国」で漬けられている。むこうでいっぱい塩漬けする。(くさらない。)そして日本で持ってきて、脱塩してかつお味とかを付けている。
(7)食べることと担当の「役所」
食べることはもともと「厚生省」の仕事だった。しかし最近では農林省、文部省もいっしょになって一体で進めてきている。
農林省ももっと食べてもらわないと、農地がいっぱいあるので困るのだ。
文部省も子どもがキレル原因に「食べること」があると考えている。子どもが一人で勝手に好きなものだけを食べている。肥満や糖尿も子どもで増えている。
(8)米は「八十八」の手間をかける
お米は八十八の「手」がかかっている。たいへんな手間をかけてつくっているということだ。「つくる苦労」を知らないと簡単にモノを捨ててしまう。ぱっと買って来るだけだとそんな苦労はわからない。モノを作るのは「面倒くさい」ことなのだ。
(9)学歴より「食歴」
これからは「学歴」よりも、その人が「何を食べてきたか」、食歴が大事な時代だ。いくら学歴があっても職歴が悪くて脳溢血なんかで倒れてしまえばおしまいだ。
人間、50歳くらいまではいいかげんなものを食べてきても、突っ走れる。しかしそれ以降はちがう。人工透析なんかにかかるようになると、ひとり年間の医療費が1000万円もかかってしまう。
健康でもっといきいきできれば税金も安くなるのだ。
(10)働くという「字」
人が動いて、「働く」という字になる。
農業はエキサイティングなスポーツみたいなもの。お金を投資してやってほしい。いい肥料もやってほしい。
(11)ほんとうの配合
たとえば野沢菜の漬けかた、調味料の割合は長野県では公開していない。和歌山の紀州梅の漬けかたも。インターネットにはいろいろのっているが、あれは当たり前のことしかのっていない。ほんとうのことは秘密になっている。
(12)食べることのむこうに農業がある
つくり手の向こうに食べ手がいる。都市近郊ではつくり手と食べ手が一体にならなければだめだ。生産者も消費者と向き合わねばならない。
日進野菜研究会の人たちも当初(30年前)は、野菜を並べて売るなんて恥ずかしいと言っていた。また皆さん、いいところの奥さんばっかりだった。それが今ではみなプロみたいになった。お金ではなく生きがい、楽しみになっている。食べ手の顔が見えているのだ。
研究会のみなさんは「忙しいから」とか言わない。頼まれれば受け入れてしまう。あの行動力は生きる力だ。
(13)この間、「現代農業」のつが池の研修センターへ行って研修を受けてきた。大根もふつうに売ったら100円、加工して売ればその何倍かになる。
以上。